更年期はうつ病・不安のリスクを高めるのか? 最新レビューが示した「脆弱性の高まる時期」

更年期というと、「ホットフラッシュ」や「寝汗」といった身体症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、更年期には「気分が落ち込む」「以前より不安になりやすい」「イライラする」といった精神的な変化を経験する方も少なくありません。

では、更年期そのものがうつ病や不安障害のリスクを高めるのでしょうか。

今回は、2023年に発表されたシステマティックレビューをもとに、更年期とうつ・不安との関係について紹介します。


目次

更年期とは?

更年期とは、卵巣機能が低下し、エストロゲンやプロゲステロンの分泌が減少していく時期を指します。

一般的には平均51〜52歳頃に閉経を迎え、以下の3つの時期に分類されます。

  • 更年期移行期(Perimenopause)
  • 閉経(Menopause)
  • 閉経後(Post-menopause)

身体的な変化だけでなく、

  • 気分の落ち込み
  • 不安
  • イライラ
  • 睡眠障害
  • 集中力低下
  • 物忘れ

などの心理症状も経験することがあります。


システマティックレビューでは何を調べたのか?

本レビューでは、

更年期がうつ病や不安障害の発症リスクを高めるのか

を明らかにするために、22本の研究が解析されました。

対象となった研究は

  • 前向きコホート研究13本
  • 後ろ向きコホート研究1本
  • 横断研究8本

で構成されています。


更年期移行期は「心が揺らぎやすい時期」だった

レビューでは、

複数の研究で

更年期移行期は抑うつ症状や不安症状が増えやすい

ことが報告されていました。

一部の研究では、

  • 更年期移行期ではうつ病発症リスクが閉経前の約2倍
  • 過去にうつ病歴がない女性でも発症リスクが約4倍

になるという結果も示されています。

一方で、すべての研究で同じ結果だったわけではなく、有意な関連が認められなかった研究もありました。

つまり、

「全員が更年期でうつ病になる」のではなく、「発症しやすくなる時期」である

という点が重要です。


閉経後も注意は必要

閉経後についても、

いくつかの研究では

  • 抑うつ症状
  • 不安症状

が閉経前より多いことが報告されました。

ただし、

閉経後しばらく経過すると症状が軽減したとする研究もあり、

精神症状は時間経過によって変化する可能性も示されています。


リスクを高める要因は何だったのか?

今回のレビューでは、更年期だけではなく、さまざまな要因が精神症状と関連していました。

① ホットフラッシュ・寝汗・睡眠障害

最も一貫していたのが、

  • ホットフラッシュ
  • 寝汗
  • 不眠

などの血管運動神経症状(VMS)でした。

これらの症状がある女性ほど、

うつ症状や不安症状が多いことが複数の研究で報告されています。


② 過去のうつ病・不安障害

レビュー全体で最も強い危険因子とされたのが、

過去にうつ病を経験していること

でした。

また、

不安障害の既往がある女性でも、更年期に抑うつ症状が出やすいことが報告されています。


③ 神経症傾向(Neuroticism)

神経症傾向とは、

ストレスを受けたときに不安や落ち込みを感じやすい性格特性です。

レビューでは、

この特性を持つ女性ほど、更年期に抑うつ症状や不安症状が出現しやすいことが示されました。


④ 身体の健康状態

慢性疾患や身体機能の低下もリスク因子でした。

身体の不調がある女性では、

うつ病発症リスクが高くなることが報告されています。


⑤ 社会的な出来事

更年期は、

  • 家族構成の変化
  • 子どもの独立
  • 夫婦関係
  • 経済的問題
  • 仕事の変化

などが重なりやすい時期でもあります。

レビューでは、

こうしたライフイベントも精神症状と関連していました。


なぜ更年期で心が不安定になるのか?

レビューでは、

原因は一つではなく、

ホルモン変化と心理社会的要因が重なっている

と考察されています。

著者らは、

エストロゲンの変動が

  • セロトニン
  • GABA

などの神経伝達に影響する可能性を紹介しています。

また、

ホットフラッシュによる睡眠障害が、

気分の落ち込みや不安につながる可能性についても述べられています。

ただし、

現時点では詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。


更年期だから仕方ない、ではない

レビューでは、

更年期は

「うつ病・不安の脆弱性が高まる時期(Window of Vulnerability)」

であると結論づけています。

しかし、

精神症状はホルモンだけで決まるものではなく、

  • 過去の精神疾患
  • 睡眠
  • 身体の健康状態
  • 性格特性
  • 社会的ストレス

など、複数の要因が重なって生じることも示されました。

そのため、更年期の精神症状を考える際には、「ホルモンだけ」に注目するのではなく、生活背景や心理社会的要因も含めて理解することが大切だと言えるでしょう。


参考文献

Alblooshi S, Taylor M, Gill N.
Does Menopause Elevate the Risk for Developing Depression and Anxiety? Results From a Systematic Review.
Australasian Psychiatry. 2023;31(2):165–173.

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