人はなぜ「自分は正しい」と思うのか― 私たちは都合の良い証拠ばかり集めてしまう ―

あなたはこれまでに、

「絶対に正しいと思っていたのに後から間違いだと分かった」

という経験はないでしょうか。

あるいは、

「なんであの人はそんなに自信満々なんだろう」

と思ったことはないでしょうか。

私たちは普段、自信のある人を見ると

「知識があるから」
「能力が高いから」

自信があるのだと思いがちです。

しかし心理学の研究では、自信は必ずしも能力や知識の量だけで決まるわけではないことが分かっています。

今回は1980年に発表された「Reasons for Confidence」という研究をもとに、

人はなぜ「自分は正しい」と思うのかを考えてみたいと思います。

目次

人は思っている以上に自信過剰である

研究者たちはまず、人がどの程度自分の知識を正しく評価できているのかを調べました。

被験者に一般常識の二択問題を解いてもらい、

  • どちらが正しいと思うか
  • どのくらい自信があるか

を答えてもらいました。

すると、多くの人が実際の正答率以上の自信を持っていました。

例えば、

「90%くらい自信がある」

と答えた問題でも、実際には90%も正解していないことが少なくありませんでした。

研究者たちは、この現象を「過信(Overconfidence)」と呼んでいます。

なぜ人は過信してしまうのか

研究者たちが注目したのは、

人は答えを選んだ後に何を考えているのか

という点でした。

例えば、

「Aが正しい」

と思ったとします。

すると私たちは無意識のうちに、

  • Aが正しい理由
  • Aを支持する証拠
  • Aを裏付ける記憶

を探し始めます。

一方で、

  • Aが間違っている可能性
  • Aに反対する証拠
  • Aを否定する情報

はあまり探そうとしません。

つまり私たちは、

全ての証拠を公平に集めているわけではなく、

自分が選んだ答えを支持する証拠を優先的に集めている可能性があるのです。

「反対理由」を考えさせる実験

そこで研究者たちは面白い実験を行いました。

被験者に答えを選ばせる前に、

  • なぜAが正しいと思うのか
  • なぜAが間違っていると思うのか
  • なぜBが正しいと思うのか
  • なぜBが間違っていると思うのか

をできるだけたくさん書き出してもらったのです。

すると結果は予想通りでした。

反対の証拠も含めて考えた人たちは、

自信と実際の正答率のズレが小さくなったのです。

つまり、

「自信がなくなった」

のではなく、

「自信が現実に近づいた」

と言えます。

さらに興味深い結果

研究者たちは次の実験で、

もっとシンプルな方法を試しました。

被験者を3つのグループに分け、

  1. 自分の答えを支持する理由を書く
  2. 自分の答えに反対する理由を書く
  3. 両方を書く

という課題を与えました。

結果は非常に興味深いものでした。

自分の答えを支持する理由を書いても、ほとんど変化はありませんでした。

しかし、

自分の答えに反対する理由を書いた人たちは、

過信が減り、より現実的な判断をするようになったのです。

研究者たちは、

人は普段から支持する理由は自然に考えているため、改めて考えさせても変化がないのだろうと考えています。

私たちの日常でも起きていること

この現象はテストだけではありません。

仕事でも、

投資でも、

人間関係でも起こります。

例えば新しい挑戦をしようとするとき、

私たちは

  • うまくいく理由
  • 成功しそうな証拠
  • 期待できる情報

を集めます。

一方で、

  • なぜ失敗するか
  • どんなリスクがあるか
  • 見落としている問題はないか

を考える機会は少なくなります。

すると、

自分の判断に対する自信はどんどん強くなります。

しかし、その自信は必ずしも現実を反映しているとは限りません。

反対理由を考える意味

ここで誤解してほしくないことがあります。

反対理由を考えることは、

悲観的になることではありません。

「どうせ失敗する」

と考えることでもありません。

そうではなく、

「もし自分が間違っているとしたら、その理由は何だろう?」

と問い直すことです。

もし問題点が見つかれば事前に対策できます。

逆に、反対理由を探しても大きな問題が見つからなければ、自分の判断により確かな根拠が与えられます。

本当に価値のある自信とは

私たちはしばしば、

自信とは強く信じることだと思っています。

しかしこの研究は、

自信とは単に強く信じることではなく、

どれだけ幅広く証拠を集められているかとも関係していることを示しています。

自分を支持する証拠だけを見るのは簡単です。

しかし、

自分に反対する証拠にも目を向けることは簡単ではありません。

だからこそ、

「私は正しいだろうか?」

だけでなく、

「もし私が間違っているとしたら?」

という問いを持つことが、

より現実的で根拠のある自信につながるのかもしれません。


参考文献

Koriat A, Lichtenstein S, Fischhoff B.
Reasons for Confidence.
Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory. 1980;6(2):107-118.

Fischhoff B, Slovic P, Lichtenstein S.
Knowing with Certainty: The Appropriateness of Extreme Confidence.
Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance. 1977;3(4):552-564.

Nickerson RS.
Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises.
Review of General Psychology. 1998;2(2):175-220.

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