「血液検査では貧血じゃないと言われたのに、なぜか疲れやすい。」
「トレーニングを頑張っているのに、パフォーマンスが上がらない。」
このようなケースでは、鉄欠乏(Iron deficiency)が関係している可能性があります。
近年の研究では、「貧血になる前の鉄不足」が多くの症状やパフォーマンス低下と関係していることが分かってきています。
今回は、近年の研究をもとに
・鉄欠乏とは何か
・貧血との違い
・疲労や運動能力との関係
・血液検査の見方
について解説します。
鉄欠乏は世界で最も多い栄養不足
鉄欠乏は世界的に非常に多い栄養欠乏症です。
研究によると、世界で20億人以上が鉄不足の状態にあると推定されています。
特に多いのは次のような人たちです。
・女性(特に月経がある年代)
・妊婦
・成長期の子ども
・持久系スポーツを行うアスリート
しかし、重要なのは
鉄不足=必ずしも貧血ではない
という点です。
鉄欠乏の3つの段階
鉄不足は次のように段階的に進行します。
① 貯蔵鉄の減少
フェリチン(貯蔵鉄)が低下する段階
② 非貧血鉄欠乏
血液のヘモグロビンは正常
しかし体内の鉄は不足
③ 鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンが低下し、貧血として診断される
つまり
鉄不足 → かなり進行してから貧血になる
という流れです。
非貧血鉄欠乏でも症状は出る
近年の研究では、ヘモグロビンが正常でも次のような症状が出ることが報告されています。
・慢性的な疲労
・集中力低下
・睡眠の質低下
・持久力低下
・回復の遅れ
実際、非貧血鉄欠乏の女性を対象にした研究では、
鉄補充により疲労が改善したことが報告されています。
つまり
貧血ではないから問題ない、とは言えない
可能性があるのです。
鉄は酸素だけでなくエネルギーにも関わる
鉄というと「ヘモグロビン」のイメージが強いですが、
実際には体内の多くの機能に関わっています。
例えば
・ミトコンドリアのエネルギー産生
・コラーゲン合成
・ビタミンD代謝
・免疫機能
・神経伝達
そのため鉄不足になると、
身体全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
アスリートと鉄欠乏
運動を行う人では、鉄不足が特に問題になります。
研究では鉄欠乏があると
・VO₂max低下
・持久力低下
・疲労増加
などが起こることが報告されています。
女性アスリートの研究では
約47%がフェリチン30以下だったにも関わらず、貧血は0%
というデータもあります。
つまり
「貧血ではない鉄欠乏」がかなり多い
ということです。
フェリチンの基準値はまだ議論中
鉄欠乏の判断に使われるのが
フェリチン(Ferritin)という数値です。
しかし、実はこの基準値はまだ議論があります。
WHO基準
15 ng/mL以下 → 鉄欠乏
しかし研究では
30 ng/mL以下
→ 鉄不足の可能性
とされることも多くあります。
さらにスポーツ医学では
35〜50 ng/mL以上が望ましい
とする意見もあります。
鉄不足が起こる原因
鉄欠乏の原因は主に次の3つです。
食事摂取不足
特に動物性食品が少ない場合
吸収低下
腸の炎症や胃腸トラブル
慢性的な鉄損失
・月経
・消化管出血
・激しい運動
まとめ
近年の研究から見えてきた重要なポイントは次の通りです。
・鉄不足は世界で最も多い栄養欠乏
・貧血になる前の鉄欠乏が多い
・非貧血でも疲労やパフォーマンス低下が起こる可能性
・フェリチン30以下は鉄不足の可能性がある
・アスリートや女性は特に注意が必要
「血液検査で貧血ではない」と言われても、
鉄の状態が十分とは限りません。
慢性的な疲労やパフォーマンス低下がある場合、
一度フェリチンなどの鉄代謝を確認することも重要かもしれません。
参考文献
JAMA Network Open
Ferritin Cutoffs and Diagnosis of Iron Deficiency in Primary Care
International Journal of Molecular Sciences
Iron Deficiency and Iron Deficiency Anemia: Potential Risk Factors in Bone Loss
BMJ Open
Effect of iron treatment on fatigue in non-anemic women
Nutrients
Iron Status and Physical Performance in Athletes


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