就労支援事業所から一般就労へ移行する人が、なぜ少ないのか― データと現場から考える「就労以前の壁」―

こんにちは。就労継続支援B型事業所 明石ぜろぽじです😊

厚生労働省や自治体の調査を見ると、
就労支援事業所から一般就労へ移行する人の割合は、決して高いとは言えません。

たとえば、

  • 就労移行支援
     → 一般就労への移行率は およそ50%前後
  • 就労継続支援A型
     → 20〜30%程度
  • 就労継続支援B型
     → 10%前後

というデータが示されています。

数字だけを見ると、
「支援を受けているのに、なぜ半分以上の人が一般就労に至らないのか」
という疑問を持つかもしれません。

しかし、この数字は
就労支援が機能していないことを意味しているのでしょうか。

私は、必ずしもそうではないと感じています。


目次

理由① そもそも「就労支援に来る時点」で差がある

まず前提として、
就労支援事業所を利用している人のスタートラインは同じではありません。

  • 体調が安定しない
  • 生活リズムが整っていない
  • 対人関係で強い不安がある
  • 疲労が抜けず、継続的な通所が難しい

こうした状態のまま
「働く準備」に入ろうとしている人も少なくありません。

つまり、

就労支援は「就労直前」ではなく
「生活を立て直す途中」にある人を多く含んでいる

という現実があります。

この段階で一般就労に至らないことは、
ある意味では自然な結果とも言えます。


理由② 支援の多くは「準備が整ってから働く」設計になっている

従来の就労支援は、

  1. 生活を整える
  2. 作業能力・対人スキルを高める
  3. 準備が整ったら就職する

という “段階的モデル” が前提になっています。

しかし現場では、

  • いつまでも「準備中」から抜け出せない
  • 準備を続けるほど不安が強くなる
  • 実際の職場環境と訓練内容が噛み合わない

といったことが起こります。

結果として、

「準備が整うのを待っているうちに、時間だけが過ぎていく」

という状態に陥る人も少なくありません。

これが、
就労支援事業所に“長く在籍する人”が多い理由の一つです。


理由③ 「働けない理由」は能力ではなく“状態”であることが多い

一般就労に進めない理由として、
能力不足が語られることがあります。

しかし実際には、

  • 疲労が抜けない
  • 緊張が強く、身体が固まる
  • 睡眠・食事・運動が乱れている
  • 人と関わるだけで消耗してしまう

といった 「状態の問題」 が大きく影響しているケースが多いです。

この状態が整わないままでは、

  • 面接に行けない
  • 働き始めても続かない

という結果になりやすく、
「一般就労に移行しなかった」というデータに反映されます。


理由④ 一般就労=ゴール、という考え方自体の限界

もう一つ大切なのは、
一般就労だけを「成功」と定義していいのかという点です。

  • 毎日通所できるようになった
  • 人と関わる時間が増えた
  • 自分の体調を把握できるようになった
  • 「働きたい」「社会と関わりたい」という感覚が戻った

これらは数字には表れませんが、
本人にとっては大きな変化です。

しかし統計上は、

「一般就労に移行していない=成果が出ていない」

と見なされてしまいます。

このズレが、
就労支援の評価を難しくしている要因でもあります。


就労以前で止まる人が多いのは「失敗」なのか?

データだけを見ると、
一般就労への移行が少ないように見えます。

けれど、

  • 生活を立て直す途中の人が多いこと
  • 支援モデルが「準備重視型」であること
  • 状態が整わないまま働くことの難しさ
  • 就労以外の変化が評価されにくいこと

これらを踏まえると、

就労以前で止まる人が多いのは、
個人の問題ではなく「支援の設計」と「評価軸」の問題

とも言えます。


おわりに

就労支援事業所から一般就労への移行率が低いことは、
「支援が足りない」ことを示しているのではなく、

「就労よりも手前に、支えるべき段階がたくさんある」

という現実を示しているのだと思います。

働くことはゴールではなく、
その人の人生の選択肢の一つ。

数字の奥にある背景を見つめ直すことが、
これからの就労支援には必要なのではないでしょうか。

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